欧米人の根深いアジア人差別。「チャイニーズ」という言葉は差別用語?

 

イタリアに住んでいるとアジア人差別を実感します。

私も、身の危険を感じる直接的な被害はないものの間接的に聞こえる声や、通りすがりに侮辱的な言葉を吐かれたこともあります。

ご存知の方も多いかと思いますが、2020年の初春、中国から始まった新型コロナウイルスによる世界的混乱からヨーロッパやアメリカ地域によるアジア人への差別が浮き彫りになりました。

アジア人に対し、あからさまな差別発言や行動、暴言、暴力、日本人や中国人が経営するお店への落書きや店前で騒ぎを立てるなどの営業妨害といった数多くの被害により、私たちアジア人は外出をするのも怖くなるほど追い詰められました。

(アジアと言っても東は日本から、西はサウジアラビアと広域ですが、どちらにしてもアジア人差別はあります。今回の場合は、主に日本人、中国人、韓国人、などの東アジア系について語ります。タイ、シンガポールの人々なども顔つきが似ているので含まれてくるかもしれません)

正直なところ、この記事を読み終えても気分が良いと言えるものではありません。人によっては、イタリアを含め外国に対して嫌悪感を抱く可能性があります。しかし、あくまでも「全ての外国人に当てはまるわけではない」と「私の個人的な考え」ということを踏まえ、先を読むようお願いいたします。

 

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はじめに

タイトルを「欧米人」という規模の大きなくくりになっていますが、私はイタリア人以外はあまり詳しくないので主にイタリアについて、私の実体験をもとに記述しています。

しかし、私の知る限りではイタリア人に限らずヨーロッパ全域とアメリカとその周辺諸国ではほぼ同じなのではと感じていますので「欧米人」とくくりました。

もちろん全てのヨーロッパ各国、アメリカやその周辺の国が同じだとは言い切れませんし、国によって差別の根深さと差別の種類はそれぞれ違うところはあると思います。(例えばいわゆる“黒人”についてもアメリカとイタリアでは差別の種類が違うように感じます)

また、これは全ての欧米人に当てはまるわけではありません。

日本人も差別する人は多いですが、全日本人が差別するわけではありません。これと同じように、全てのイタリア人が差別をするわけではなく、常識を持っている人は少なくとも面と向かって差別発言はしません。逆に面と向かって差別発言する人もいて、その中には悪気が全くない人から悪意を持ってる人と様々です。

 

日本人の私が抱いていた中国人への差別

恥ずかしながら、正直なところ私も海外に出るまで中国人に対して差別的な感情を抱いていました。

「あんなマナーの悪い中国人と日本人を一緒にするな」と。

全ての中国人に対し思っていたわけではありません。私の通っていた学校には中国からの留学生もいたし、知り合いも何人かいて、彼らのマナーが悪いと思ったことはありません。

結局は中国人でも人それぞれだと思います。日本の十倍以上、世界一の人口なら色んな人がいて当たり前です。

しかし日本人が中国人より優位に立っていると思っていたのは恥ずかしい事実です。

イタリアを含む欧米諸国では日本のアニメやsushiブームもあり、日本に憧れる人や日本人好きな人も一定数いて私が日本人だと知ると態度を変える人も見てきました。私はそのあからさまな態度の違いに優越感を覚えました。

この時点で差別だと、当時の私は気づきませんでした。

 

日本は中国の一部だと思っている人もいる

「私が日本人だと知ると態度を変える人もいる」というのは、日本という国を知る一部のイタリア人のみです。

そもそも、日本がどこにあるのか知らない、アジアだとはなんとなく知っているけれどよくわからない、という人が多いことに気づきました。(とくに年配の人に多いですが、アジアや日本に興味がない若者も同じです。)

中には「日本と中国は何が違うの?」「日本は中国の一部でしょう?」と思っている人や、「日本ってどこ?北朝鮮?」なんて言ってくる人もいました。

私のイタリア人の夫が同僚に「あなたの奥さんの故郷、国から出られなくてかわいそうね。旅行も行けないんでしょう?」と言わたことがあるそうで、一瞬何のことを言っているのかわかりませんでしたが、どうやら北朝鮮と混同していたということに気づいた…ということがありました。

さすがに世界唯一の独裁国家と他の国を混同してしまうのは教育面でどうかと思いますが(これはほんの一握りの人で多くのイタリア人は認識しているはず…と思いたいです)、日本が中国の一部だとか、中国と変わらないと思っている人は多いです。

 

海外に住んで思ったのは決して日本は特別な国でありません。

はじめは日本を知らない人が多いことに衝撃を受けましたが、じゃあ私が全世界の国名と場所を言えるかといえばそうではありません。

当時20歳ぐらいだった私の妹は、私がイタリア人の恋人(今の夫)を紹介するまでイタリアとイギリスの区別もついていませんでした。海外に興味ない人はこの程度なんだと思います。

また高齢者はとくに世界地理なんてわかりません。私の祖母(日本人)は白人ならみんなアメリカ人と決めつけます。私の義理祖母(イタリア人)もアジアというくくりはわかっても、日本はどこにあるか、中国や台湾の違いもわかりません。

 

チャイニーズは差別用語

日本で一番知られている人種差別と言えば、黒人への差別だと思います。

アメリカでの黒人差別は現在でも根深い問題ですが、それに隠れたアジア人差別も根深い問題です。隠れているからこそ、明るみに出ず我慢してきたアジア人は多いと思います。

とくに世界中にいる中国人は標的になってきたと思います。それゆえ、彼らを「チャイニーズ(イタリア語:チネーゼ)」と呼ぶようになり、今では東アジア人=チャイニーズと、多くの人が認識しています。(少なくともイタリアでは。)

アジア人が珍しくない大都市や観光地では多少違ってくるかもしれませんが、田舎などではアジア人を見れば「チャイニーズ」という声が聞こえてきます。間接的に聞こえてくることもあれば、ニヤニヤして面と向かって言われることもあります。

なぜわざわざ「チャイニーズ」と言う必要があるのか?

差別だからです。差別用語になってるため、彼らはアジア人を下に見て「チャイニーズ」と言います。

「君はチャイニーズかい?」など、純粋な質問なら問題ありませんが、そうではなくただ顔を見ただけで「チャイニーズ」と決めつけ呼びます。

昔の私は「中国人じゃないけど」と怒っていましたが、そもそもチャイニーズと呼ぶ輩は中国人かどうかは関係なく、日本人も含め、アジア人=チャイニーズなのです。

そういう人たちに「私は日本人だ」と言ったところでそもそも日本と中国が違う国とわかっていない人も多いし、逆に手のひらを返されて「あなた日本人なの?私日本好きなの!」と、差別するような人と仲良くなりたくはありません。

 

「ニーハオ」と言われたら、あなたはどう思いますか?

わざわざ「チャイニーズ」と呼ぶのは悪意がある差別発言だと思いますが、ではいきなり「ニーハオ」と言われたら、どう思いますか?

結局これも悪意があるかないかによると、私は思います。

「チャイニーズ」と同じく、見下した発言と感じた場合は、完全無視します。

逆に、親しみを込めての挨拶であれば、私も「ニーハオ」とか「こんにちは」とか「チャオ」など挨拶を返します。

 

私がみた中国人への差別

中国人が経営するスーパーマーケットには普通のスーパーでは手に入らないアジアや日本の食材や調味料が売られているため、イタリアに住む日本人にとっては重宝するお店です。

そのお店に赴いたときびっくりしたのが「チャオ、チャイニーズ」「チャイニーズ、これ探してるんだけど」と二人称をチャイニーズと呼んでいたことです。

例えば、イタリア人が経営するイタリアン食材店に行って「こんにちは、イタリア人」「イタリア人、バルサミコ酢はある?」と言いますか?すごく失礼な行為ではないですか?

悲しくも現地の中国人はそういう差別に慣れているようで、それに対して怒ったりする人は少ないのかな、と思います。

(ちなみに、イタリアで差別されることが多いはずのアフリカ系の人も店員に「チャイニーズ」と発言していました。差別用語だと思っていないのか、自分が差別に慣れていて何も感じないのか、わざとなのかわかりませんが。)

 

中国人と決めつけるイタリア人

イタリアに住むアジア人の中では圧倒的に中国人が多く、それに比べれば日本人はほんの一握りです。

なので私を含む日本人をみたイタリア人のほとんどが「あの人は中国人かな?」とまず思うはずです。(たまに一発で日本人と見抜く人もいますが)

それは仕方ないことだと思います。私たちがイタリア人、フランス人、スペイン人、アメリカ人などの見分けが難しいように、彼らにとっても日本人と中国人や韓国人の見分けは難しいです。

しかし「あなた何人?中国人?」と聞けばいいものを、勝手に中国人と決めつけるのはその時点でマナー違反だと思います。

私が出会った出来事を語ります。

車での走行中に軽い事故が起き、その際被害者である女性は現状証拠としてメモをしました。(自分の保身のためにいうと、私は直接の加害者でも被害者でもありませんw)

彼女のメモには加害者は名前で書いてあるのに対し、私はcinese(チャイニーズ)と書かれていたのです。

これに対し、私は何も言いませんでした。なぜならこの場合、国籍は重要ではないため、私がcineseではないと否定したところで何の意味も持たないからです。

残るのは中国人と勝手に決めつけてメモに残した彼女の教養の無さだけです。

もしあなたがトラブルに遭ったとき、その相手が外国人だったら、現状証拠となるメモに「白人」「黒人」「イタリア人」などと記録しますか?

差別をするのは教養の無さの象徴だと思うようになり、当初は差別に不快感を持っていましたが、今となっては「無教養で可哀想な人」としか思えなくなりました。

 

アジアンアイ(アーモンドアイ)のジェスチャー

日本でも話題になっているのでしょうか。欧米人が目を指で引っ張りアジア人の目を真似する動作のことで、たびたび問題になっていることを。

指で目を吊り上げたり引っ張ったりして、アジア人特有のアーモンドアイを表したジェスチャーです。どんなものか知りたい場合は下のリンクをご覧ください。

Lavezzi, foto con gli occhi a mandorla. “Cacciatelo dalla Cina”
Clic goliardico dell'argentino che mima i tratti somatici orientali con la divisa ufficiale del club

釣り目やたれ目は関係ありません。目を指で引っ張った時点で差別的なジェスチャーとなっています。

これは黒人を「ニ○ー」と呼ぶのと同じで、欧米では根深い差別問題になっています。

人によっては「これの何が悪いんだ」と思う人もいるかもしれませんが、背景には人種差別があります。

生まれつきのブロンドや青い瞳に対して、おそらく多くの人が素敵と感じるかと思いますが、このジェスチャーは尊敬の念ではなくバカにした差別行為だと今の世の中では定義づけられています。

(ちなみに私はアジア人の髪や目は丈夫でキレイだと感じています。色素の薄い瞳は光に弱いし、イタリア人も含め白人の髪の毛は細く傷みやすいので)

なのにもかかわず欧米諸国の有名人がこのジェスチャーをインスタなどにアップし、非難を浴び謝罪をするというのを繰り返しています。

それはアジア人差別が黒人差別に比べたら浮彫になっていないため、この行為を差別と認識していない人が多いからです。しかも、「何が悪いんだ」と主張する人も多いです。

もちろん、黒人に対する差別は人権を否定するようなひどいものも多く、それに比べたらアジア人差はかわいいものかもしれませんが、そもそも白人至上主義が存在するのが原因です。

 

白人至上主義

人種のヒエラルキーとして、白人がトップだと考えている人は多いです。

「今の世の中、そんなことないでしょう」と思っている人もいるかもしれませんが、欧米に住めば世の中がどれだけ白人至上主義か、というのを実感する人も多いかと思います。

2019年の記事で、こんなのもあります。→「「OK」のサインは白人至上主義のシンボルになったので、一般の方はご注意下さい」(外部リンク)

イタリアは、おそらくこの記事のようなことはありませんが、しかし表立って主張しないものの深層心理で白人が一番だと思っている人も多いです。アジア系やアフリカ系を下に見ている傾向は大いにあります。

 

~余談~

アーモンドアイに関しては、差別だと思っていない人が多いですが、肌の色に関しては敏感なイタリア人が多いように思います。

私がジョークで自虐的に「イエローモンキーだから」と言うと、「何言ってんの!あなたは白いわよ、私と変わらないじゃない!」と、過剰フォローをされることが何度かありました。

なので、少なくともイタリア人は肌の色で分けているというより(イタリア人の肌の色って微妙なところですしね)、「ヨーロッパは優位」と考えている…と言った方が近いのかもしれません。

※何度も言いますが、全てのイタリア人がこのように考えているわけではありません。

 

さいごに

私は日本を出るまで、「日本人は差別される人種ではない、日本人に生まれて良かった」などとおごっていましたが、イタリアに住んでからはなんと無知だったか、と思い知らされました。

今となっては、(イタリアに住む)中国人に対し同志のようなものを勝手に抱いています。

日本人を含むアジア人に対しての差別について語ってきましたが、日本に住む外国人も差別を受けていると思います。

また差別の種類も違ってくるかと思います。

差別とは、無知からくるものだと思います。私も海外に住む経験がなければ、差別される痛みを知らないまま、無意識に差別していたと思います。(それでも自分が気づかずに行っている差別はあるかもしれません。)

日本育ちのハーフの人なんかもそうですよね。好奇な目で見られたり、「外国の血が混じってるから」という先入観を持たれたり、はたまた外国人と決めつけられたり…

悪意のある差別と違い、無意識な差別は「差別意識を持っている」と気づきにくいことがあります。差別意識がないから、差別じゃないと否定し非を認めない人は多くいます。

差別が根絶するのは不可能かもしれませんが、ひとりでも多くの人の意識が変わればなと願います。

 

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